【就活体験記3】どういう自分になりたいのかちゃんと考えてる?

普通に考えて、自分が面接を受けた会社が就活のアドバイスをしてくれることなんて、ありえませんよね。

試験を受けに来た人物が、自分の会社にとって必要な人材であるかどうかを判別するのが人事であり、いちいち「どこがダメだった」とか「もっとこういう風に話したほうがいい」とか「志望動機が薄いからもっとエピソードを具体的に」だなんて丁寧に教えてくれることは、まあないです。

だからこそ不採用通知をもらった時に、ヤキモキするんですよねえ・・・

だってどこがダメだったのかが分からないから。

就職試験というのはまるで異性への告白に似ているかもしれません。

相手のことを好きになって(企業に興味を持つ)、好みや性格を知って(企業研究をする)、そしてアプローチして告白して(履歴書を出して面接を受ける)、成功したらお付き合いが始まる(採用)。

だから、ダメだった時にそのショックは半端ないぐらい大きいですよね。
なんでダメかも教えてもらえないから、ただただ自分という人間そのものが否定されたんじゃないかと自己嫌悪になり、どんどん自分に自信が持てなくなっていく。
このまま生きていてもいいことないんじゃないのか・・・
就活の苦労による自殺の件数も増えているようです。

そんな中、私が受けた1つの面接が、後に私の就活を大きく変えることになったのです。

前置きが長くなりましたが、私のことについてお話したいと思います。

目次

高卒で食いつなぐためのアルバイト

私は普通の高校を卒業してから、ただただ食いつなぐためにアルバイト生活をしてきました。いわゆるフリーターです。

特にこれと言ってやりたいこともなく、将来の目標もなく、友達とバイクで出かけるのが唯一の趣味ぐらいのものでした。

ギャンブルや風俗はしませんでしたが、浪費癖があって、バイクのパーツやガソリン代やらでバイト代はほとんど消えてました。
付き合ってた彼女がデート代を出してくれることもあったぐらいで、正直今考えるととても情けなかったなと思います。

そんな私が就職をしようと決心したのは、彼女と結婚したいと思うようになったからです。
もう付き合って4年。彼女も真剣に私との結婚を考えてくれていました。

でも、高卒でロクに働いたことのないような男との結婚を、どこの親が許すでしょうか。
そして結婚するとなると生活費が当然かかってきます。今の自分のバイト代だけじゃ彼女を養っていくことなんて到底できません。

だから正社員として働けるように就活を始めたわけですが、そのモチベーションの根底は「ちゃんと生活できるようになりたい」でした。

将来どういう人間になりたいのか?

今までまともな就職活動をしたことがないので、最初はわからないことだらけでしたし、不安もありました。
今までアルバイトしかしてこなかった自分に正社員なんて勤まるのか・・・なんてずっと考えてました。

でもここまで来たらもうやるしかない。とにかく正社員になって、彼女の両親にちゃんと挨拶にいこう、それを目標に就活を続けました。

私が目指していたのはメーカーの営業職でした。

フリーター時代にずっと接客を中心にやっていたので、人と話すのは得意だというなんとなくの自信があったのと、営業はやりたくないという人が多いから営業職を志望すると受かりやすい、みたいなネットの書き込みを見たことがあったからです。

「まあ自分ならなんとか営業できるんじゃないかな?」
不安な気持ちを取り除くには、根拠のない自信で自分を言い聞かせることしかできませんでした。

そして、書類選考を通過し、面接。
就活をスタートしてから初めての面接です。緊張しないわけがありません。
久々にスーツに袖を通し、心臓バクバクで面接会場に向かいました。

「次の方、お入りください」

そう呼ばれ、面接室に入ると、そこは今までドラマでしか見たことのないような風景でした。

自分の前に面接官たちがいて、自分のことを頭からつま先までじっくりを見て精査している。今までのアルバイトの面接とは比べ物にならないぐらいの緊張感でした。
大げさかもしれませんが、確かにあの時自分はそう思いました。「これがバイトと正社員との違いなんだ」、と。

(画像はイメージです。画像元はこちら

「それでは、簡単に自己PRと志望動機をお願いします」

自己PRと志望動機なんてものはどこの面接でも必ず聞かれる鉄板の質問。
私はあらかじめ用意しておいたものを、あたかも丸暗記ではなく今思いついて喋っているかのように見せながら、なんとかこの最高の緊張の中で話しました。
多分、ここでは失敗はしなかったと思います。

しかし、次の質問で、私は見事に撃沈します。

「それでは次に、あなたは将来どういう人間になりたいですか?」

「えっ・・・」

頭が真っ白になりました。

どういう人間になりたいか?わかりません。そんな質問まったく想定していませんでした。
想定していないのだからとっさに自分なりの答えを出す必要があります。

でも。

ありません。

将来どういう人間になりたいのかというビジョンが、私にはありません。

当然「えっ、えっと・・・」と言葉を詰まらせ、ようやく出た答えは

「えっと・・・しょ、将来は、立派に働いて仕事を頑張れる人間になりたいです・・・」

顔が恥ずかしさと情けなさで真っ赤になっていくのがわかりました。
何をやってるんだ自分は。こんなにアガって、答えを詰まってどうする・・・!そしてやっとの思いで言ったことも小学生レベルの回答・・・
面接官の人たちの顔色が曇ったのが分かります。

あ、落ちたな・・・

こういうのって、自分で分かるんですね。急に冷静になる自分がいました。
ははは、こりゃもう無理だ。ここから挽回なんてできっこない。きっと面接官たちも呆れてることだろう。
さーて、帰ったら次の会社探さなきゃ・・・ そう思っていた時です。予想だにしない言葉が私の耳に聞こえてきました。

「君、就活初めてか?」

仕事を通してどんな自分になりたいのか

「は、はい・・・」
正直に答えました。

「いやまあ、明らかに緊張してたし、面接に慣れてないんだと思ってね。」

やっぱり見ぬかれていました。いや、そりゃ当然ですよ当然。相手はプロなんですから。
自分のような就活したてのゆとり世代、一目見れば分かります。

私にこう言った面接官の方はおそらく50代ぐらいの男性でした。多分部長や課長クラスなのでしょう。
そして、次に私に向かってこう言いました。

「君は、仕事をすることでどういう自分になりたいの? あっ、これ面接とか思わないで、気楽に答えていいから」

・・・正直、考えたことがありませんでした。

何のために働くか?なんで仕事をするのか?そんなもの、「生活していくため」に決まってます。結婚したいから、彼女と一緒に生きていきたいから、そのためにはお金が必要だからです。

でも、そんな自分本位の理由では当然会社は採用してくれないこともわかっていました。だから、取ってつけた理由を考えて、それっぽい志望動機を用意して面接に臨む・・・
その中に「自分としての芯や信念」がないから、予想外の質問に答えられず、ずっとフラフラしてる・・・

だから、私の就活は本当にハリボテのようなものだったんだろうと思います。

「正直・・・わかりません、すみません・・・」

私は消えたくなる思いをこらえてこう言いました。
すると、面接官はニッコリと笑って、

「うん、そうだろう、そうだろうな。だから焦らずにゆっくり考えたらいい。
 自分がどんな人間になりたいのか、そしてそれを実現するためにどの会社で何をやりたいのか。」

「はい・・・はい・・・!あ、ありがとうございました・・・・!」

半泣きで目を赤くしながら、私は部屋を去りました。

相手にとっては、就活に不慣れな私にちょっとアドバイスをしてやるか、ぐらいのものだったのかもしれません。
ですが、私にとってはこれ以上のない最高のアドバイスを得た気がしました。
もちろんこの会社は不採用でしたが、それも全く気にならないぐらいに、私は「どういう人間になっていきたいのか」を考え、次に向かって歩き始めていました。

その後、就活が嘘のように上手くいきはじめた

あの面接官の方にアドバイスを頂いてから、私の就活に対する意識は180度変わりました。

私は仕事を通して、自分が関わった人を1人でも多く幸せにしたいと本気で思うようになりました。
そして営業という形なら直に相手と接することができ、良いコミュニケーションを取りながら関係を築いていくことができる、だから営業職は自分に一番向いている、と。

「どういう自分になりたいのか」に対する自分なりの答えが持てた気がして、面接の中でもそれを軸にして話すようになりました。
その結果、念願の営業職に正社員として入社することができました!

もし、最初にあの会社を受けていなければ、自分の考えが間違っていることに気づかないまま、ダラダラと就活を今でも続けていたかもしれません。
そう考えると、本当にあの面接官の方々には感謝でいっぱいです。とても貴重な出会いだったと思います。

「●●に入りたい」と、まず会社ありきで探すのではなく、「どうなりたいのか」をベースに持っていれば、おのづと「じゃあどういう仕事がしたいのか」「どの会社がいいのか」が見えてくるんじゃないでしょうか。

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